第2章 ブロック②
*・゜゜・*:.。..。.:*・*:゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*
合宿初日が終わった。
インハイ選抜メンバーだけ特別メニューがあって、選抜メンバーだけ夕食の時間は遅くなってしまった。クタクタで正直食欲も湧かないけれど無理やり胃に詰め込んで、そそくさと風呂に駆け込んでいく。
普段から見慣れたみんなの裸を横目に、家から持ってきたボディソープで体を洗った。お気に入りの匂いに癒されるのだ。ずっと嗅いでいたいけど、シャワーで泡を流してすぐに風呂を出る。運動部員の風呂は短い。
脱衣所でこれまたお気に入りの部屋着に着替えた時、ふと喉がとても乾いていることに気付く。チームメイトに自販機の場所を聞いてみると「結構離れてて面倒くさいよー」と言ってげんなりとした顔になった。
「大丈夫、ちょっと行ってくるね」
部屋の点呼時間だけ確認して、私は自販機へと向かった。旧館に繋がっている渡り廊下前。人の気配がどんどんなくなり、薄暗いこの場所はなんだか気味が悪かった。早く買って戻りたいと思った時、ようやく自販機の明るい光が見えてきた……んだけど、
「………合宿の時にそういった物を使う行為は、褒められたものではないな」
なんと。牛島くんの後ろ姿が見えたのだった。こんなところで誰と話しているんだろう。
「はあーい。んじゃ部屋戻るよ。なつみちゃん一人で戻れる?一緒に戻るのもマズそうだしネ」
「う、うん。大丈夫」
「明日も練習頑張ろうネ」
…天童くんと緑川。
なるほど。二人で会ってたところに真面目な牛島くんが現れて怒られてしまった…というところか。可哀想だけど一応合宿だしね。なんて思ってる間に牛島くんと天童くんがこちらに向かって歩いてきた。
「…お疲れさまです」
「お、お疲れさま」
牛島くんに軽く睨まれながら挨拶されてしまった。いや、私だって悪気はないんだよ。ジュース買いにきただけだし。見たくてこんな気まずい場面を覗き見してたワケじゃない。
「…はるか先輩」
牛島くんの後ろから歩いてきた天童くんが私の名前を呼ぶ。
「若利くん、先部屋戻ってて」
「……ああ。わかった」
そう言った天童くんは「ついてきて」と私に呟いて曲がり角をさっさと曲がっていってしまった。