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まだまだ青い白鳥たち~天童編~

第2章 ブロック②


夏休みに入ると同時に合宿が始まった。


今年から男バレと合同になったらしく、なんとなく皆がソワソワしているのを肌で感じる。…ははーん。うちの部の女子達はみんな男バレのキャプテン狙いだな。みんなの視線が合宿移動用のバス前で指示を出しているキャプテンに集まっているをチラリと確認する。


あとは…牛島くんってところかな。一年生にしてはとても背が高くてユース候補と言われている彼は言わずもがな人気がある。みんな青春してるなーとババくさい事を考えていると後ろから肩を叩かれた。


「はるか先輩、合宿で勝負かけるの?」
「天童くん」


ニマーっと笑った彼は面白そうな玩具を見つけたような顔をして私の横に並んだ。


「かけるわけないでしょ。私の好きな人キャプテンじゃないし」
「え~~なんだそうなの。残念」


つまんねーとでも言いたげな彼の視線は相変わらず緑川に向いている。男女合同合宿なんて結構みんな盛り上がってしまうから、さすがの天童くんでも心配なんだろう。


「…天童くん、これ緑川にあげてきて。もともと一年にあげようと思ってたんだ。天童くんからって渡したほうが喜ぶと思うし」


私はリュックからマスカット味の飴を一袋取り出して彼にハイっと手渡した。


「…なんで俺から?」
「いまバレー部員ほぼ全員集まってるよ。ちゃんと彼氏ってことアピールしてきなよ」
「…まさか先輩に恋愛指南されるなんてネ」


ありがと、と言うと彼は緑川のもとへ走っていった。あんな心細そうな顔はこっちが見てられなかった。天童くんって大人びてるけど、やっぱり所詮は一年生だな…と私は得意げに先輩風を吹かせてみた。…まあ、一つしか変わらないんだけど。


遠目にチラリと見てみると緑川は喜んでいるようで、作戦は上手くいったようだった。そうそう。女子はちょっとしたことの積み重ねが大事なんデスヨ。


可愛い後輩二人が仲良くやってる姿を微笑ましく見たあと、私はすぐにバスに乗り込んだ。レギュラーではないけれどこれでもベンチ入りしているので、この合宿の練習はインハイに向けての最終調整だった。頑張るのみ。
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