第1章 ブロック①
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「美しいねぇ。はるか先輩のブロックは」
今日も緑川のお迎えに来た天童くんが後ろから声を掛けてきた。私達二年生の使っているコートがちょうど体育館の出入口に一番近く、今ローテーションで私は後衛に回ったところだった。天童くんは出入口の階段に腰かけながら我々の練習を見ていたらしい。
「天童くんもミドルブロッカーだもんね」
「うん。はるか先輩と俺、プレーが似てるかもね」
彼のプレーは見たことないけど、きっとキルブロックなんだろう。私もソフトブロックよりも得点になるブロックが好きで日々頑張って跳んでいる。
「緑川迎えにきたんでしょ。呼んでこようか?」
「…大丈夫。しばらく見てたいから」
そういう彼の眼差しはとても優しい。大事で大事で仕方ないと視線が物語っている。緑川は本当に愛されてるんだな。
「俺ね、考えたよ。はるか先輩の好みのタイプ」
「なになに。教えて」
ニマーっといつもの笑顔になった彼は楽しそうに喋り出す。
「うちのキャプテンとか好きでしょ。めちゃめちゃ王子キャラ」
「キャプテンねー。爽やかすぎて近寄れない無理」
「そんな贅沢言ってていいの?三年生なんてあっという間に卒業しちゃうヨ」
なぜか男バレキャプテンのことが好きだという設定にされ、アクションを強要される。なぜ私は一年生に恋の説教を受けなければならないのだろうか。そもそも好きでもないし。
「私はね、自然に好きな人ができるのを待つんだ。それがおばあちゃんになった時でも別にいいの」
「…まあ、焦って恋に恋するよりはマシかもね」
そう言う天童くんはちょっと呆れたような苦笑いをした。
「…もしかして天童くん、告白されたりするんだ?」
「……なつみちゃんには内緒ね」
モテる男の子は辛いなあ。私もそんな経験してみたいけど、それはそれで大変なのかもしれないな。何人も同時に付き合うってのも大変そうだし、全員を振るのだって精神が削られそうだ。
「はるか先輩は苦労なさそうでいいねぇ」
「…私、いちおう先輩なんですけど」
知ってるよって笑った天童くんは「なつみちゃーん!帰ろー!」って彼女の名を呼んで嬉しそうに手を振った。