第1章 ブロック①
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「前から蒼井さんのこと気になってて。良かったら付き合えないかな?」
…ビックリした。男バレの同学年の男の子。普段全然話さないし接点もない(接点はあるか。同じバレー部だし)突然こんなことを言われても正直私のどこが好きになったというんだろう。
部活で休憩に入った時。
水道で水を汲んでいた私に突然話し掛けてきたその男子。
「…あの、話したことあったっけ?」
「いや、ないよ。でもいいなーって思ってて。蒼井さんがOKしてくれたら今の彼女とも別れるよ」
ん?今なんて言った?今の彼女?
この人いま彼女いるってこと?それなのに私に告白を…?
さっぱり意味が分からなくなって混乱していると、
「…せんぱーい。そういうのダサイですよ」
「て、天童!」
「もう休憩終わりますよ。俺結構探したんですからネ」
「分かったよ、戻ればいいんだろ。蒼井、考えといて」
考えるとは一体?
彼女持ちの人にOK出す可能性があるとでも思ってるのかな。なんだか私、舐められてるよなー…と。急に悲しくなってきて「ハハ」と勝手に笑いが込み上げてきた。
「…はるか先輩、あんなの放っときなよ。保険かけるなんてダサイでしょ」
「うーん…初めての告白がアレだったから…その、やっぱりコレって普通じゃないよね?」
「ない」
天童くんはキッパリと言い切ってハアーと溜息を吐いた。
「…まあ、俺も保険なんだけどね」
「え?」
ボソッと呟いた彼の言葉は聞き取れなくて。私は興味本位で聞いてしまった。
「ねえ、天童くんと緑川はどっちが告白したの?」
天童くんは目を見開き、眉間に皺を寄せた。不機嫌になったのがすぐに伝わってくる。聞いてはいけない質問だったんだ。気軽に話せる後輩だからって踏み込みすぎてしまったか。
「…俺からに決まってるでしょ」
それだけ吐き捨てるように言うと、天童くんはさっさと男バレの体育館へと戻って行ってしまった。謝りたかったんだけど、元からそんなに仲良しこよしの先輩後輩関係でもない。まあ大丈夫かとその時私は何も気にしなかった。