第1章 ブロック①
「ねーねー、男バレの一年生イケメン揃いじゃない?」
放課後の部活の最中にいつもの女バレメンバーで話が盛り上がる。
「誰がいい?私はやっぱり牛若!」
「えー、全然挨拶してくれなかったよー?新歓ん時に話したのにさぁ」
「それより瀬見くんは?ジャニーズ系じゃん!」
「はるかは?誰が好き?」
これは困った。確かに男バレ一年生はみんな格好いい。それは分かってるんだけど、それを言ったところで付き合えるわけでもないし。ここは無難に牛島若利くんってことにしよう。そう決めて私は言葉を口にしようとする。
「私は…」
「ちょっと先輩たち、天童クンの名前出てませんけどぉ?」
体育館の入口前で話し込んでいた私達の後ろから、一年生の中でも有名人な彼が現れた。特徴的な赤い髪にスラッとした身長。この子は確か、
「天童じゃん!彼女持ちは引っ込んでな!」
「そーだよ!女バレの中でも綺麗どころの緑川掻っ攫いやがって!」
「彼女いるからって調子乗んなよ!」
…酷い言われようだ。でも確かに緑川は可愛い。顔も可愛いんだけど後輩としても私は大好きだ。本人は「ガタイ良くて毎日泣いてます!」とかよく分からんこと言ってるけど。天童くんが背高いから別にいいじゃないか。
「彼女いるけど、カッコイイ~って言われたいじゃないスか。で、そちらの先輩は男バレ一年で誰がタイプなの?」
「はは…じゃあ天童くんかな」
なんというか目力が凄すぎて言わされてしまった感がある。でも別にいいや。とくに好きなタイプって本当にいないし。
「…先輩優しいネ。ほら先輩方もこういう気遣いができないから彼氏できないんですよ」
「うざっっ!天童コロス!男バレのキャプテンに言いつけるからね!」
あのイケメンだけど怒ると鬼になるキャプテンに言うつもりだろうか?それはあまりに酷いと思い、みんなを「まあまあ」を宥めた。天童くんは「お姉さま達は冗談通じないんだから~」ヤレヤレと肩をすくめていて、それが彼女達の機嫌をますます悪くさせていた。
「…で、先輩ホントは誰がタイプなの?」
この場から立ち去ろうとする直前に天童くんは私の耳元で囁いた。えっ…と思ったのもほんの一瞬。彼はクスクスと笑いながら走り去ってしまっていた。