第4章 ブロック④
「…ずっと好きでした。ここに入学してからずっと蒼井先輩を見てきました」
……私には恋愛経験が全くない。それでも彼に廊下で声を掛けられてから、こういう展開になることはなんとなく想像できた。人の好意というものは伝染するんだろうか。
彼の熱を含んだ目は直視できないほど純粋だ。ねえ、私はその場のノリと勢いだけで後輩の男と寝るような女だよ。
私に対する思いをたどたどしく語ってくれる彼の気持ちは嬉しいのだけど、自分はそんな素晴らしい女などではなく、聞いていくうちに苛々さえしてくる。
何を見て、私のことが好きになったの―――?
ろくに話したこともない女のどこが好きなの――――?
せっかく告白されたのに、そんなこと深く考えるような女ってあんまりいないのかもしれない。この後輩は女子に人気もあるし、とりあえず付き合っていくうちに好きになるというパターンも有り得るかもしれない。
「俺と……付き合ってもらえませんか」
求めるような目に見つめられ続けて、私はそれもアリかなと思えてきた。今時こんなに純粋な告白をしてくれる子とだったら幸せにお付き合いできるかもしれない――――
「ダ―――――メだって。この人は俺のだから」
目の前に突然現れたのは、私が恋い焦がれ、求め続けていた赤い髪色の後輩だった。