第3章 ブロック③
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合同合宿は無事に終わった。
インターハイ予選も始まり、女子バレー部は順調に駒を進めたのだけど、決勝で新山女子に敗れてしまった。今年こそは行けると思って頑張ったんだけどな。
男子のほうはというと無事に全国出場を果たしたが、二回戦で敗退した。全国制覇はなかなかに難しい。
そして天童くんとはあれから―――。
結局顔を合わせる機会も無くて、あの日のことを聞くことも、私の気持ちを伝えることもできていなかった。いや、気持ちを伝えることは最初から考えていなかった。伝えたところでどうだというのだろう。
彼には緑川という恋人がいる。緑川は私にとって大事な後輩だ。天童くんだっていつも女バレに遊びにきてくれている可愛い後輩でもある。そんな二人にとってマイナスになるような行動は起こしたくない。
だから私はこの気持ちを抱えたまま、あの日の出来事を隠し通したまま過ごすつもりでいた。そんなある日――――。
「…緑川と牛島くんが体育館で抱き合ってた?」
「マジマジ!インハイ終わって男バレが東京から帰ってきた日あるじゃん?あの日らしいよ!」
…そんなまさか。
女バレ内は朝からその噂で持ち切りだった。もともと緑川は牛島くんと中等部から一緒で仲が良くて、みんなでよく冷やかしていたものだけど。天童くんとちゃんと付き合いだしたのは誰でも知っている。
「三角関係ってやつ?もともと牛島くんとも噂あったじゃん~~!緑川やるよねぇ!」
緑川が牛島くんと?いやいや有り得ないでしょ。でもその話が本当なら…?いま天童くんはどんな気持ちでいるんだろう。彼のことだ。緑川の些細な気持ちや行動にも気付いている筈じゃないのか。
その時、私は初めて緑川に対して怒りが込み上げた。天童くんが愛しそうな視線を送っている時だって、あの二人が仲良さそうに帰っていくのを見送る時だって、イライラしたことなんてないのに。
二人が――――。
両想いでうまくやっていると思っていたから我慢していたのに。