第3章 ブロック③
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あれ…?
気付いた時には私は合宿所の女子部屋で眠っていた。窓から差し込む月明りで、時刻はまだ夜なのだと知る。
「…はるか起きたぁ?」
隣の布団で眠っていたチームメイトがゴソゴソ動いた私に気付き、声を掛けてくれる。
「私、どうして…?」
「貧血でロビーのソファーにいたらしいよ。大丈夫?一年の天童くんがこの部屋まで運んで来てくれたんだよ。覚えてない?」
天童くん――――。
そうだ、私は彼と――――。
下半身に感じる違和感は紛れもなく彼との行為の証拠だ。気を失ってしまった私を運んでくれたんだろう。
「天童くんって優しいんだねぇ。やっぱりあんだけ優しいから緑川も好きなのかね。後でお礼言っときなよ~」
いわゆるお姫様だっこで運んできたのだと話してくれるチームメイトの顔はうっとりとしている。いつもと違う髪型というのも彼女達をトキめかせるのに充分だったようだ。
これはノリでヤッてしまった……という状態なのだろうか。
少なくとも私は途中から彼に好意を持ってしまったけれど、これは一般的にいうセフレというやつでは…?
やってしまった…というのが正直な気持ちだ。やはりこういう行為はちゃんと付き合っている恋人同士でするべきものなのだ。うん、そうに決まってる。そんなよく分からない理論が頭の中をグルグルする。
明日、もし天童くんと顔を合わせたらどうしよう?
なんて声を掛ければいいのだろう。もしくは彼のほうから掛けてくれるだろうか。目は合わせてくれるかな。逸らさないでいつもみたいに挨拶してくれるかな。
不安で胸が押し潰されそうになってギューっと締め付けられる。こんな感覚知らない。辛いのに天童くんに会いたくてたまらない。ついさっきまで一緒にいたのに。
これは紛れもなく――――
「…天童くんが、好き……」
私は生まれて初めて恋を知った。でもそれは知らないほうがいい感情だった。だって彼には好きな人がいる。大切にしている彼女がいる。私はほんの気まぐれで抱かれただけ。
神様、ねぇちょっと酷くないかな。恋は甘いものだったんじゃないの。なんで初恋の相手が寄りによって他の人のモノなの。