第2章 Promise
麗日さんと談笑していたらふと、足元に気配を感じた。
「どうしたん?…えと、峰田くんだっけ?」
視線を移すと小さい男の子…峰田くんがいた。麗日さんが首を傾げる。私も何か用かと問おうとした時だった。
「これは確かに…」とつぶやく声と共に脚を伝う手の感触。ぞわりと背筋から全身に鳥肌が立つ。
知らない男の人の歪んだ口元が脳裏をよぎる。白黒のモザイクがかった短い映像。それから、舐めるような掌の、指先の、感触。
私は頭を抱え、劈くような叫び声を上げていた。
それから叫んだ後の記憶がない。
気がついた時には廊下は綿の海に飲まれパニック状態で、天井に張り付いた相澤先生が髪を逆立てて私を凝視していた。
後から聞いた話だと飯田くんが先生を呼びに行ってくれたらしい。
ちなみに峰田くんは綿に埋まり三途の川を見たという…。
──そう、私は男の子が苦手だ。
厳密に言うと男性に触られるのが苦手で、触れられると個性が暴走してしまう…ヒーローとしては致命的な弱点だった。