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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第10章 Infatuate



目を閉じて思考の波に揺蕩っていたら猛烈な睡魔に襲われた。はっと我に返り、今ここで寝るわけにはいかないと慌てて体を離した。

「元気出たよ。ありがとう」

轟くんはそうか、と優しげな声色で言う。するりと腕が離れると室温は低くないはずなのに肌寒さを感じた。

「そういや俺ももう少しこのままでいて欲しいと、思ったことがある。体育祭の時とか…他にも何度も」

聞き返すと轟くんは頷いて肯定した。
体育祭の時とは、手を重ねた…あの儀式?をした時のことだろうか。確かに『このまま試合出る』なんて言ってたっけ。
思い出して小さく笑った。そういう意味だったんだ。

「てことは、俺がされて気持ちよかったことをしてやればいいんだな」
「う、うう…ん?そうなの?」
「違うのか?」
「わかんない…」

きょとんとした轟くんに苦笑する。
やってみないことには始まらないだろうと、とりあえず任せることにした。轟くんがされて嫌じゃなかったことなら、きっと私も嫌じゃないと思う。


そしてその後、冬美さんに挨拶をして轟家を後にした。随分長居してしまったから外はもう薄暗くなっていた。雨も止んでいる。
例の如く轟くんは家まで送ると聞かなくて、頑なに断る理由もない為お言葉に甘えることにした。

隣を歩く彼の横顔は薄暗がりの中でも綺麗だと感じる。じっと見つめていた訳じゃないのに、轟くんは私の視線に気がついて「どうかしたか」と訊ねた。
私はすっきりした心持ちで微笑んだ。

「やっぱり好きだなーって思ったの」
「俺も綿世が好きだ」
「……え?」

突然の告白に目を瞬かせる。
轟くんは俯きがちに目を伏せて続けた。

「柔らけぇ髪と、肌も。すぐ赤くなる顔も。あと個性も〝綿世〟って名称でいいんじゃねぇかってくらい合ってて好きだ」

思いがけない轟くんの言葉に、言われた通り顔が熱を持つ。

「個性も綿世の一部だから当然だと思うが…綿世だからこそ、この個性で人を笑顔に出来るんじゃねぇかと思う」
「わ、わ…そんなこと…」
「お。真っ赤だな」
「言わないでっ…!」

顔を隠してるのに平気で指摘してくる轟くん。
とどめに「可愛い」と宣うものだから「轟くんもかっこよくない可愛い」と反撃した。勿論効かなかった。

自宅までの短い距離。私は相も変わらず翻弄されながら帰路につくのだった。



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