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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第4章 Dawn



理解が追いつかない私を置いて、神妙な面持ちの轟くんはでも、と続ける。

「綿世は違った。傷ついても誰かを守ろうと、助けようと、強くあろうと、ヒーローを目指して笑ってた」

私は何も言えないまま轟くんの紡ぐ言葉を待つ。彼の目にはちゃんと私が映っていた。

「綿世が笑うと、俺はアイツを忘れられる。結局、助けられてばっかだ。……ありがとな」

紡がれた轟くんの気持ち。アイツっていうのはお父さんの事だろう。轟くんの視線の先にある憎しみや憤り、そして悲しみ…少しでも和らぐように願っていた。
私が笑うことで一ミリでも忘れられるのなら、私はいつだって笑っているよ。心の中で答えて頷く代わりに微笑んで返した。

「守りたいって気持ちはたぶん、無くならねぇ。だが、これからはライバルだ。俺もお前に負けねぇよう頑張る」
「うん。私も負けないよ!もっともっと頑張るから!」

触れるか触れないかの距離で拳を突き合わせる。認めて貰えたことが、私を見てくれたことが嬉しくて目を細めた。轟くんはふ、と笑って突き合わせた拳をぶつけた。慌てて離れてって言おうとしたけれど、綿が溢れる事はなくて、さらに動揺した。

「あ、あれ!?出なかった…なんで?」
「さあな」
「っ轟くん!今のわざとでしょ?危ないよ、今度こそ怪我したらどうするの」
「そんなヤワじゃねぇ」

軽い言い合いをしているともう大分時間が経ったことに気がつく。助けられてるのは私だ。USJでの事もそうだし、今だってそう。個性が暴発しない事が増えたのはきっと彼のお陰だと思う。

手を伸ばし抱きとめられたあの時も、今も、触れられたのにあの事件のあの感触…思い出さなかった。

轟くんがなぜ私を守りたいって思ったのか考えてもわからないけど、彼が私を守るなら私も轟くんを守りたい。
いつか、抱えている物が何なのか話してくれるだろうか。
…ううん、話してくれなくてもいい。いつか轟くんの心が晴れて、悲しい目をしなくて済みますようにと胸の内で願った。
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