第3章 Declaration
ヴィラン達を厳重に拘束し、その場を後にした。
どうやらここは土砂ゾーンのようで、土砂に埋もれた建物の屋根がそこかしこに見える。ぬかるんだ地形に関しては、轟くんが地面を凍らせてくれているため滑りはすれど土砂道よりかは幾分も歩きやすかった。
私達は恐らく今も交戦しているであろう中央の広場を目指している。先程得た情報によると、私達生徒に充てられたのは寄せ集めのヴィランだけ。飛ばされたみんなはきっと無事だろう。問題は相澤先生、13号先生の所…あの主犯格のヴィランがオールマイトを殺す手筈だと聞いた。ということはそれほどに強い、また策があるということ…。
「綿世、さっきは悪かった。咄嗟に触っちまって」
「や!大丈夫だよ!個性暴走しなかったし、寧ろ感謝してる」
轟くんに触れられたのに、平気だった。緊急事態だったからだろうか。それとももしかして克服した?
何であろうと嬉しかった。このまま行けば完全に制御できるかもしれない。乗り越えられるかもしれない。
「ありがとう。轟くんはヒーローだよ」
ニッと笑って言うと轟くんは目を丸くした後ちょっと恥ずかしそうに顔を逸らした。
彼のいろんな表情が見られるようになってこの短期間で少し印象が変わった。中学の頃は無表情で周りに興味なくて良くいえばクール、悪くいえば怖いイメージだったから。
どこからか大きな音がする。岩と岩をぶつけたような衝撃を孕んだ音だ。
「先生達大丈夫かな。すごく嫌な予感がするの」
「ああ、急ぐぞ」
「うん」
轟くんが創り出す氷の道を滑走する。中央広場まであと少し。
胸の奥でざわざわと嫌な波が立っている。そうだ、あの時もこんな感じだった。胸がざわめいて、焦燥感に駆り立てられる。やがて全身が硬直して、私は、逃げる事すら出来なかった。
──
「こんにちは」
「…だ、れ…?」
「まりちゃん、迎えにきたよ」
「──!!」
だれ…?おねがい、たすけて、
──