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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第3章 Declaration



「綿世?」
「ご、ごめ、なんか…嫌なこと、思い出した」

お腹の奥が苦しくて立ち止まって蹲る。は、は、と短く息を吐く。落ち着け、自分に言い聞かせてゆっくり呼吸を整えた。
さっきのはきっと過去の…あの事件の記憶だ。

「大丈夫か」

指先が肩に触れる感覚。重い熱と鋭い寒気が背筋を駆け巡る。

「さわらないで!」

気づけば背中から勢いよく綿が溢れ出て、彼を跳ね除けていた。
頭が痛い。苦しい。だめ、今は…しっかりしないと。膝に置いた指にぐっと力を込めて立ち上がる。
大丈夫、私は大丈夫。瞑った目を開けると土砂道が終わるのが見えた。はっとして後ろを振り返る。私、轟くんを突き飛ばしてしまった。辺り一面に綿の塊が広がっている。

「ごめんなさい!けが!怪我してない?」
「ああ、何ともない。…俺が軽率だった」
「轟くんのせいじゃないよ!」

小さく俯いて謝る轟くん。私いつも謝らせてばかりだ。治ったかもなんて酷く浅い考えだった。きっとあれはまぐれみたいなものだったんだ。申し訳なさと不甲斐なさで押し潰されそうになる。だけど、ヒーロー志望がこんなんじゃいけない。マイナスな思考を振り払うように頭を振った。

「ごめんね。もう平気だから。行こう!」
「お、あ、待て。綿世、背中…」
「え?背中?」

肩越しに自分の背中を見るとコスチュームが破れて今にもチューブトップがチューブで無くなりそうになっていた。
そんな凄まじい勢いで個性暴発したの!?我ながら驚きだ…。
すぐに背中から綿を糸状にしたものを出してコスチュームを修復した。といっても応急処置だ。縫うことは出来ないから糸を皮膚から切り離さずに留めて置くことで固定している。

「そんな使い方も出来るのか。」
「ん、ちまちま操るのは集中するから疲れるけどね」
「器用なんだな」
「へへ、たくさん練習したんだ。さあ今度こそ行こ!」

轟くんが頷くのを見て彼より先に広場に向け走り出す。先生達の所が無事ならそれで良し。他の皆の援護に向かう。もしもピンチなら邪魔にならないよう助ける。
何が出来るか、何が正しいのかはわからない。けど、私は私のやれることをする。それがヒーローだと思うから。

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