第3章 Declaration
「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵」
二人の攻撃を受けて尚、煙の中で揺らめく影。効いてない…否、避けられた?
「だめだ、退きなさい二人共!!」
「私の目的はあなた達を散らして、嬲り殺す!」
13号先生の叫びも空しく黒い靄を纏った風が勢いよく吹き付けた。その場に立っているのがやっとで身動きが取れない。どうにか防ごうと腕で顔覆うも視界はぼやけたままで。
その時、靄を切り裂くかの如く、轟くんの声が響いた。
「綿世!!」
「っ轟くん…!」
どこ?見えない。でも確かに感じる彼の気配。
無我夢中で前へと手を伸ばすと、乾いた音と共に手に降ってきた温もり。瞬時に腕が引っ張られ、温もりは全身に広がる。この光景どこかで…?既視感を覚えて間もなく視界は真っ暗になった。
視界が開けるとまず目に飛び込んだのは白。
「少しじっとしてろ」
声の主を見上げてやっと状況を理解する。私、轟くんに抱きしめられている。まるで予想もしていなかった状況に私は彼のコスチュームの胸元を握ったまま硬直した。
轟くんは左手から冷気を発し、直下の地面を凍らせる。何が起きているのかと辺りを見渡せば大勢のヴィランが立ち尽くしたまま凍らされていた。
「子供一人に情けねぇな。しっかりしろよ、大人だろ?」
この一瞬で、この数を戦闘不能にしたの…?
肌を刺す冷気にふる、と身震いする。彼の服を掴んでいたことに気づいて慌てて体を離した。まだ動ける敵がいるかもしれない。雑念を取っ払うべくぎゅっと握った掌に爪を立てて周囲の警戒に集中した。
白い息を吐き、ヴィランに近づいていく轟くん。ヴィラン達は彼の強さに戦いている。それもそうだ、何もさせて貰えなかったんだもの。何もしてないのは私もだけど…!
「うおらああっ!」
背後から敵の動きを感じ、瞬時に屈んで避け片足に蹴りを入れる。相手は槍を持った大柄な男だった。ヴィランが体勢を崩し前のめりになったところを、両手から綿の紐を放出して体に巻き付け捕らえる。
すかさず轟くんがヴィランに右手を翳して全身を凍らせた。不要になった紐を解くと力を失ったヴィランは地面に伏した。
轟くんは敵の策を洗おうとヴィランを脅す。しかし、彼らは大した情報を持っておらず、得るものは少なかった。