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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第10章 Infatuate



それから雑談もそこそこにまた勉強を再開した。
後半は轟くんに「現代文わかるか」と聞かれて今度は私が教える側になった。と言っても作者の心情だとかのピンポイントな質問に答えただけ。

もっと役に立てたらいいんだけど、勉強では難しいかもしれない。かと言って実技もどうだろう。
そもそも私が轟くんより秀でているところなんてあるだろうか。


実習ではまだ手合わせした事がない。
いつか挑戦する日が楽しみだと思うけれど、その時が来るのはまだ先であって欲しいとも思う。

今はまだ。もう少しこの気持ちに整理がついてから。だけど、心の内ではそんな考えを責める自分がいた。


そうやって逃げる臆病者。ライバルでしょ?
ライバルとして見れる自信が無いの?
こんな私を轟くんはどう思うだろうね。


轟くんの横顔を覗き見るとぱちりと目が合う。何も言葉が見つからず眉を下げて軽く微笑むしかなかった。

「どうした?そろそろ帰るか」
「うん、今日はありがとうね」
「いや。こっちこそ。俺も勉強になった」

優しい彼の言葉に胸の奥が痛む。好きだと思えば思うほど自己嫌悪する。私の唇は心に秘めた想いを紡ごうとはしない。

轟くんは私の気なんて露ほども知らず、懐いた猫でも可愛がるみたいに頭を撫でてくる。

「疲れたか?」
「んーちょっとね。でも大丈夫だよ」

最後にぽんと頭に手を置いて轟くんは立ち上がる。そして何も言わず私に手を差し伸べた。
躊躇いつつもその手を取ると強く引かれ、軽々と立ち上がることが出来た。
こういうことを自然にやってのけるのが凄いなと思っていたら、がっしりした腕にぎゅっと包み込まれた。

突然のことに声も出せず、代わりに浅く息を吐いた。
ほんっとに轟くんは想定外なことばかりする。あくまで平静を保ちつつ彼の背中を叩いた。

「どうしたの?永遠の別れみたいだよ」
「縁起でもねぇこと言うな」
「あはは…ごめん」

好意的な抱擁なんじゃないかって。期待したくなくて。わざと冗談を言ってみたけれど通用しなかった。

どうしよう。
速まる鼓動と色づいているであろう頬。まだ気づかれていないだろうか。

轟くんの胸元に顔を埋めて隠した。緩やかに鳴る心音は耳に心地よい。このまま離れたくないな、と胸の内で呟いた。

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