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【ヒロアカ】Don't touch me.【轟】

第3章 Declaration



「轟くん、今日帰りに寄りたいところがあるから駅まででいいかな?」
「どこに行くんだ?」
「お買い物だよ」
「ついて行く」
「え!いや、いいよ!」

食材の買い出しするだけだからと続けるが、轟くんの有無を言わさない目と無言の重圧に気圧されて渋々頷いた。

なぜ私が1人になるのを嫌がるのか、よくわからない。私を心配して気にかけてくれている…というのとは少し違う気がする。時々見せる険しい表情からそう感じていた。

轟くんの顔をじっと見つめて考えていると、訝しげな表情を浮かべられ、咄嗟に視線を落とした。

「あの…帰り付き添ってくれるのありがたいんだけど、轟くんよくこわい顔するから。なにか思いつめてるんじゃないかなって…」

顔を上げると轟くんは面食らったような顔で私を見つめていた。
無意識に彼の腕に伸ばしかけた手。
その手で何をしようとしたのか、私は自分のことなのに理解出来ず、戸惑うままに宙に彷徨わせてから静かに下ろした。

沈黙の中、風がさらさらと私達の髪を撫でる。

「私ね、あの事件のこと曖昧にしか思い出せないんだ。唯一、ヴィランに触られた事が…感触が、強く残ってる。…これを乗り越えないと私はヒーローになれないの」

思い出すと手が震える。負けるわけにはいかないと胸元で拳を握り、力強く轟くんを見上げた。

「私はヒーローになりたい。私を救けてくれたヒーローのように。…だから、がんばるんだ」

虚勢だっていい。精一杯の笑顔を浮かべて彼に告げた。
これは宣戦布告でもある。何を見ているのかわからない、彼への。
そして、過去に捕らわれたままの自分への。

轟くんは我に返ったように目を見開いて、一言、

「悪ィ」

と小さく頭を下げた。
それが何に対しての謝罪なのか、全てを理解するには私は轟くんを知らなすぎた。でも、私の想いはちゃんと伝わったと思う。

その後の電車内では轟くんは何か考え込んでいて、スーパーにつくまで会話を交わすことは無かった。
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