第1章 エレベーターで
風林が吐き出した言葉は焦凍の咥内に吸い込まれて消える。
ただ互いの唇を重ね合わせるだけの行為であるが、気恥ずかしさから逃げようとすれば追い掛けてくる。
は、と短く風林から声が漏れるものの、焦凍は気にせずに更に追い掛け、エレベーターの壁に右手で彼女の左手を縫い付け、左手で後頭部を確保する。
そのうち、エレベーターが一階に到着して扉が開くものの、空かさず焦凍が扉を閉める。
「(甘ぇ…)」
次第に長くなっていく口付けは互いの息を短く荒くさせ、気分を高揚とさせる材料となり、風林が右手を焦凍の肩に回したのを皮切りに、焦凍は彼女の左手を縫い付けていた右手を彼女の腰に回し、左手が開放された風林は今度は両腕で焦凍の首へとしがみつき、一度至近距離で見つめ合ってから今度は互いに唇を寄せ合った。
舌を絡め、狭い箱の中で水音と荒い息を響かせながら籠もる熱に浮かされて長く、長く溶け合う口付けを交わす。
「(頭が…体がシビレて…何も考えられない……)」
長い長い口付けに、次第に思考力を奪われていく風林の体から力が抜け、ガクリと体が崩れ落ちようとするのを、お、と呟いた焦凍が片腕で支える。
「大丈夫か?風林……っ」
「はぁ…はっ……」
長い口付けによって性的興奮を高められてしまった風林は、焦凍の目にどのように映っているのだろう。
とろりと蕩けた表情でエレベーターの天井を眺めながら、口端からはどちらのものか分からない唾液が垂れ、時折ビクリと震える恋人の姿に、焦凍の喉がゴクリと鳴る。
同時に焦凍はじん、と下腹部が痺れるのを感じて無意識に彼女のショートパンツ越しに自身の雄を擦り付けてしまった。
「あんっ」
「っ…ワリ…」
途端に上がった甘い声に一瞬怯むものの、この先の快感を抑えることが出来ず、一度腰を離した焦凍は彼女の腰を撫でながらゆっくりと風林のズボンを下ろしていく。
「ン…はぁ…」
「…っ(濡れてる…)」