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インモラル・リフレクソロジー【R18】

第1章 イランイラン


「あっ……」

足の親指に何かあたたかいものが纏わりつく。
慌てて上げた視界に映る信じられないもの。
一面濃茶の壁を背に屈み込む彼の頭。
白衣の肩から伸びた腕の先、長い指先が私の足を愛おしむように包み込んで。
そして、私の足の指は、彼の口に咥えられていた。

「何をするの」

一瞬、すぼめていた唇を開いた彼は、指先を舐めあげた。

「貴女が望んだことでしょう? 亜紀」

「私が、何を……んっ」

また、唾液を溜め込んだ壺のなかに引き込まれるような感覚。
足の指に吸い付かれるなんて。
恥ずかしいはずの行為にどこか酔っていた。
その光景の淫靡さに。

男が女に口でさせる時ってこんな感じなのかしら。

そんなことを考えている場合ではないはずなのに。
何故か止めるという理性は浮かび上がることも無く、ただ快感だけに流されてゆく。

ぴちゅりぴちゅりと水音をたてて舐められる指。
柔らかく厚いものに纏わりつかれて絡め取られる。
扱くように強く吸われて飲み込まれそうになる。

「や……め、て……」

なけなしの理性と形だけの否定が紡いだ言葉。
それを真に受けたように離れてゆく彼。
安堵と物足りない何かが私のなかでせめぎ合う。
でも、それは、あっけなく流された。
親指ではなく……彼はそのあと、すべての指に同じ愛撫を繰り返していったから。

オイルと彼の唾液にまみれた五本の指。
ぐちゅぐちゅとしたその感触は、別の何かを呼び起こす。
ほんの僅か開かれた脚の間の。
私のカラダの奥にいちばん近い部分。

「触って」

「どこを、ですか」

素っ気ないほどに冷静な彼はそれでもその手を私の足から離すことは無くて。

そこじゃないの。
触れて欲しいのは。

躊躇わずに膝を開いた。

「困りましたね。
リフレクソロジーは足に施術するものなんですよ」

「だって、さっきは膝まで」

「あれは足先をリラックスしてもらう為のもの。
脚は足につながっていて別のものではありませんから」

「お願い、触れて欲しいの」

「触れていますよ。
お客様に安心感を持っていただくために、一度施術を始めたら必ず手を触れたままにしておくのが鉄則ですからね」

そう言った彼は器用に片手でオイルのボトルを引き寄せた。
彼の掌が受けたオイル……それは、甘く、むせかえるようで。



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