第1章 イランイラン
待ち望んだそれはあまりに甘美すぎて。
与えられなかったもどかしさの分も、早く最上の快楽に導かれたくて。
「ゃ……ゆ、る……して……おねが、い」
懇願する言葉。
なのに。
「何を?」
私のカラダをディフューザーだと言い出した時の少しだけ高揚した声音が幻だったように、彼の声は今もまた冷静に響く。
私のカラダのなかに指を差し入れ、動かし、淫らに狂わせているのは、自分では無いとでも言うように。
彼の、声は、冷たい。
なのに、私は狂わされてゆく。
その声の冷たささえも媚薬のようで。
私のカラダはどこまでも、解され、緩められ、彼の為すがままになる。
「ゆる……んっ、し、て……」
「だから、何を?」
下さい。
これ以上の解放を。
カラダも。ココロも。
解き放たれたい。
「も……ぁあ……いかせ、て……くださ、い」
「このまま?」
「ゃ、ぁあ……わたし、を……だ、いて……ぁあんっ……」
どうか、してる、私。
リフレクソロジーサロンで初めて会った男の人に、「抱いて下さい」と懇願するなんて。
こんなにも……必死に。
おかしい。狂ってる。
でも、もう、要らないの。
解放されたカラダには、解放されたココロ。
理性とか常識とか、そんなものはもう要らない。
「んっ……ぁあ……」
彼の指が引き抜かれて。
もう私にはその先しか無い。
「お願い、です……私、を……抱いて下さい」
「仕方ありませんね、ディフューザーのお願いでは」
そう言う彼の声音も表情も何を考えているのかわからない。
それでも。
彼が、挿入ってくる。
私のなかが満たされる。
何を考えているかもわからない男に胎内深くまで突き刺され抉られて。
私は、満たされた。
カラダも、ココロも、解放されて。
私はただ快楽だけを追い求めた。
そこには。
むせかえるような……甘い香りが満ちていた。