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インモラル・リフレクソロジー【R18】

第1章 イランイラン


むせかえるような……甘い香りが満ちていた。





緩く開いて投げ出された両脚。
膝の下にあてがわれたタオルが沈む。

「出来るだけ力を抜いて下さいね。
難しければ意識しないだけでもいいです」

それが難しいんじゃない、って思う。

彼の両掌が爪先に押し当てられた。

意識しないようになんて、天井でも見ているしかないかしら?

ありふれたバリ・モダンの装飾。
壁際の間接照明が複雑な光の帯をひろげている。
その濃淡が、薄れて、重なって、また濃くなる影を、じっと見つめていた。

爪先から足の甲。
足首。
脛。
膝。
そして膝上まで。
あたたかくて大きな彼の掌が滑る。
膝の丸みをなぞるように分かれたふたつの掌は、ゆっくりと脚の両側を撫で降りてゆく。
やがてそれは、くるぶしから、また、爪先を包むように。
その緩やかな動きはまるで静かな波が打ち寄せ引いていくようで。
それまで感じなかった肌に触れる空気を、彼の掌から離れた脚が感じていた。

もう一方の脚の爪先にも、あたたかみを感じる。
片掌は元の爪先に置かれたままで、もう片掌が移されていた。
新しく感じたあたたかさが馴染む頃、残っていたもう片掌も移ってゆく。
そして繰り返される、また膝上までの滑るような動き。

膝から下に固まっていた何かが解けて流れ出してゆくよう。
何かが私のカラダのなかで解放されてゆく。

「力が強すぎたら言って下さいね」

踵に添えられた掌の上で足首を解される。
緩く円を描くように回される足首は痛いとは感じない。

ただ、動かされるたびに、足先から脚の付け根まで確かにつながっているんだって実感するだけ。

足首を回していた彼の掌が爪先に移る。
足首と同じように親指を付け根から回される。

「んっ……」

「痛いですか?」

「いいえ、そんなふうに動かしたりしないから……固まっているのね」

「女性はヒールの高い靴を履くとどうしても爪先全体を圧迫しますからね。
ご自分でも普段から軽く解されるといいですよ」

靴の中、ストッキングの中。
鎧を纏うように圧迫されて固まった爪先を思い浮かべた。

今、それは、ゆっくりと解されている。
足の指一本一本が、引き離され緩やかに回転して、抑え込むものの無い空間に解き放たれてゆく。

目を閉じた、イメージのなか。
うっすらと立ち上る甘い香りと共に。



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