第2章 雄英高校
(うわ、入りづらい……)
1-Aと描かれた扉の前に棒立ちする。
入りづらい。とても入りづらいのだ。
(ドア開けっぱにしてくれてたらなあ……)
そう思いながら、扉を手にかける。その瞬間______
「机に足をかけるな!」
と、教室の中から男子の怒鳴り声が聞こえてきて、私は肩をびくりと上下させた。私がかけたのは手、そして扉。 大丈夫だ、私に言ったわけではない。深呼吸を1回して、再び扉に手をかけ、思い切って教室に入った。
次の瞬間、私の目に衝撃の光景が飛び込んできた。
目つきの悪い、不良のような生徒が机に足をかけて眼鏡の男子を睨んでいる。あれで怯まないとは、素晴らしい精神力。
「雄英の先輩方や、机の製作者方に失礼だとは思わないか!?」
「思わねーよ! テメェどこ中だ端役が!」
と、再び怒鳴り声が聞こえた。
(え……?1-Aだよね!?ヒーロー科だよね!?てか此処雄英だよね……!?)
「うぇぇ…………」
思わず声が漏れてしまった。
(やっべ、やっべえ!)
またまた思わず、心の中で2回呟いてしまった。
私が確認出来た限り、4つの目が、私を見た。慌てて目を逸らして自分の席に着こうとすると、不良っぽい男子の方が私を呼び止めた。
「おい」
(やばいやばい!恥しい……初日にこんな……不良に絡まれて……)
恥ずかしさで俯き、顔を真っ赤にしていると、顔がめきめきと鉱物で覆われ始めた。
(こ、こいつはガーネット……!)
そう、これは私の“個性”だ。
基本柔軟に戦闘に対応出来るが、心に反応して(主に恥しい時と怒った時)鉱物を生成したり体に纏ってしまったりと、コントロールが利かない面がある。それが今。己の恥ずかしさを代弁するように、紅いガーネットが顔半分を覆った。まるでマスクのようだ。
「聞こえねーのかクソモブが!」
ガッ、と音がした。不良(仮)が机を蹴ったようだ。このままだと当たってしまう。
「こら! 女性に手を上げるな!」
眼鏡の男子が、咄嗟に机を掴んで元に戻す。 助けてくれたようだ。
「手じゃねぇ足だ」
不良(仮)がそう吐き捨てると、眼鏡の男子は「ふむ、そうか……」などと呟いて考えるような仕草をした。
「あ、ありがとう……」
なけなしのコミュ力で眼鏡男子に礼を言うと、彼は私の顔面を凝視した。
「ききききき君!それは!?」
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