第2章 雄英高校
小さい頃、私は母が大好きだった。綺麗で、優しくて、お父さんのことを愛していた。勿論、子供である私と兄さんのことも。
けれど知った。
人は、平等ではない。
個性も、力も、賢さも、注がれる愛情も。私はそれを、14歳の時にようやく知った。
母は人が変わったように私を嫌った。殴られ、蹴られ、罵られた。連れてきた知らない男に髪を切られた日もあった。父も兄も、黙って見ているのみだった。
「黒くて長い、綺麗な髪だ。 お前の瞳が良く映える」
そう、兄に褒められた髪だったのに。自分のことのように嬉しそうに頭を撫でてくれた兄の顔が、脳に焼き付いて離れない。
ざっくり切られた髪を整えてくれたことも、『短いのも似合っているじゃないか!』と一生懸命励ましてくれたことも、全て黙って見ていた罪滅ぼしのつもりなのだろうと理解した。
『私に娘は要らない』『お前は私の子供じゃない』『何故私と同じ個性を持たない』『死んでしまえば良い』と、目を虚ろにした母に言われたことを、私は今でもはっきりと覚えている。存在を否定されて悲しかったあの時の胸の痛みも、何もかも。
それらを全て背負って、私は雄英高校に足を踏み入れた。
私は。
(強くなりたい。 ヒーローになりたい……そして、)
己の存在を、轟かせるんだ。