第4章 途方もない悪意
「すっげー!! USJかよ!?」
演習場に着くなり、切島が目を輝かせながらそう言った。
(USJってなんだったっけ? ……多分あれだ、あの遊園地みたいなやつ )
舞依はあまりそういったものに興味がなかったので、切島の言う『USJ』について考える時間が必要だった。 少し間を置き、プロヒーローが話し始めた。 宇宙服のようなコスチュームを纏った彼の表情は確認出来ない。
「水難事故,土砂災害,火事……etc. あらゆる災害を想定し僕が造り上げた演習場です」
(先生が作った……!?)
「その名も…… 嘘(U)の災害(S)や事故(J)ルーム!」
(マジでUSJだった…………)
「スペースヒーロー13号だ!」
「私好きなの13号!」
緑谷は興奮気味に、麗日はぴょんぴょん跳ねながらそう言った。
(13号かわええ……てか足細……)
「災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
嬉しそうに騒ぐ緑谷に、舞依は頬を緩ませた。
「13号、オールマイトは?」
「先輩それが……」
相澤と13号は声を抑えて何度か言葉を交わした。生徒達には聞こえず、会話が終わるのを待っていた。
「えー……始める前にお小言を1つ2つ……3つ……4つ……」
(増えてきてる!)
13号がこちらに向き直って話し始めた。 段々と増えていくお小言に、顔を引きつらせる生徒達。
「皆さんご存知かと思いますが、僕の“個性”はブラックホール。 何でも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その“個性”で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね!!」
「ええ…… 」
麗日はこくこくと素早く頷いている。 速すぎて何度か残像を見た舞依。
「しかし簡単に人を殺せる力です。 みんなの中にもそういう“個性”がいるでしょう」
「……!」
舞依は、心臓が煩く鳴り始めるのを感じた。
(私だ……刃物のように鉱物を扱うことも出来るし、毒性のあるものだって……)
舞依の“個性”は鉱物を自在な形、大きさで生み出したり、身に纏ったり出来るというもの。 一度大きさに見合った重さ,硬度の鉱物を生み出せば、後はその数値を変えることも可能だ。 それに使うかどうかは別として、人を殺せる力であることには違いない。