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【ヒロアカ】ガーネットの瞳

第4章 途方もない悪意


もみくちゃになって大食堂から抜け出すと、廊下は学年関係なく生徒で溢れかえっていた。 舞依は人の多い場所が苦手である。 まるで地獄絵図のような光景に、ぶるりと身震いした。姿は見えるものの、 麗日達とは離れ離れになってしまったようだ。

「うわぁ!」

「デク君!」

文字通り、更に向こうへ行ってしまった緑谷へ、舞依と麗日は手を伸ばした。 飯田はどこかで何かを叫んでいる。

「緑谷君……! 痛っ!」

舞依は誰かに足を踏まれた。

(個性を使って……! でも無理か……)

ここは雄英。 個性を使って何とかしようと思ったが、もみくちゃの状態では、策は考えられなかった。また足を踏まれた。

「はあ……」

もう色々と諦めた舞依は、大食堂でさよならした汁だくの牛丼のことを思い出した。

(侵入者め……! 私の牛丼を返せ! ランチラッシュに謝れ!)

彼女は流れるプールに浸かっているように生徒達に身を任せながら、目を瞑った。

(最高峰なのにこの慌てよう……)

「ふぅ……」

舞依がまたため息をついた瞬間、誰かに強く右腕を引かれた。 そのまま何かの部屋に引きずり込まれる。
そこに居たのは______

「とどろき、君……」

轟焦凍。 推薦入学者の1人だ。

「おう」

(助けてくれたの……?)

電気のついていない仮眠室。 轟焦凍と舞依は、生徒達が騒ぐ声を聞きながら、互いを見つめた。 右腕は未だ掴まれたままだ。

「ありがとう」

「おう」

轟はまたそう言った。

「あの、腕……」

制服の上から掴まれたままの腕に気がつき、舞依は顔を赤くした。 相手は男子で、気恥しいのだろう。 めきめきと顔をガーネットが覆い始めた。

「お」

轟は腕に気がつき、ぱっと離した。 それから「悪ぃ」と呟く。 彼はまじまじとガーネットを見た。 視線に耐えられなくなり、舞依は説明した。

「あ、ごめん。 これ勝手に出ちゃうんだ」

「個性の暴走か?」

「暴走、ってほどでもないけど……」

「そうか」

会話が切れた。 会話が苦手な舞依は気まずいと思わずにはいられなかった。 気がつくと、辺りは静寂に包まれていた。 侵入者は取り押さえられたのだろうか。

「戻るか」

轟はそう言ってドアを開けた。
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