第4章 途方もない悪意
食欲が出ずに、購買で買ったゼリー飲料で昼食を済ませた舞依は、ついに放課後を迎えた。
「いつもならいっぱい食べるのに!」
そう麗日に心配されたが、笑って誤魔化した。
「一緒に帰ろ〜!」
「えっと、今日は……」
「どうかしたのか? 神宮寺君」
いつもなら麗日,緑谷,飯田と下校するが、今日はそういうわけにはいかない。 言葉に詰まる舞依を見て、麗日と飯田は頭上に疑問符を浮かべた。 緑谷は帰りの支度をしているところだった。
「あ! もしかして、朝相澤先生と話してたやつ?」
「そう、それ。 今日は先に帰ってもらえるかな?」
そう伝えると、麗日は大きく頷いた。
「分かった! あのさ、結局何で呼び出しされたん? デク君と一緒に隠れて見てたけど全然聞こえへんかった!」
(あ、)
ドクン、と心臓が脈を打った。 本当のことを伝えるべきか否か。 舞依は俯いた。
「麗日君! 盗み聞きは______……神宮寺君? どうかしたか?」
飯田が何か言いかけたが、舞依の異変に気づいて尋ねた。 舞依が顔を上げ頭(かぶり)を振ると、支度を終えた緑谷がこちらにやって来た。
「お待たせ!遅くなっちゃってごめんね」
「と、とにかく…… 今日は先に帰ってて! それじゃあ!」
緑谷が話し終えたタイミングで、机の上のリュックを鷲掴みにし、走って教室を出た。
そのまま走って職員室まで行き、相澤を呼び出す。
『仮眠室で待ってろ』とのことで、だだっ広い廊下をまた走り、仮眠室へとたどり着いた。
部屋の中は、綺麗に掃除されていた。 適当に椅子に座り、その背もたれに深く寄りかかる。
(どうしてだろう……)
何故母親が、舞依が雄英高校に居るということを知っているのか。 そして何故、わざわざ会いに来るのだろうか。 そんな疑問と頭痛に苦しみながら、舞依は深い眠りに落ちた。