第7章 灯台下暗し
扉に耳を当て、音を確認する。
静かな呼吸が1人分、聞こえてくる。
でもその呼吸は子供のものではない。
『(場所を移した……?)』
シェイドの疑問に答えるように、部屋から足音が近づいて来た。堂々とした足運びで、まるで自分の存在を知らせるように扉の前に立つ。
シェイドは影に入ると、開かれた扉の陰に隠れ、爆破された。
轟いた爆音。視界を一気に塞いだ煙。古い日本家屋の2階廊下に開いた大穴。
そこから5m後方に両手に銃を構える人間。
パパパパパパン
3発ずつ合計6発撃ったシェイドは、爆発を発生させた人間の足元まで影で這って行き、
パンッ
見上げた先の左太腿に撃ったが、その右腕を巨大な手榴弾に掴まれた。
そして赤い目と視線が会い、掴まれた右腕が熱を帯び、
『っ!』
左の銃でその目に向けて撃つ。
反射的に撃った事によって右腕は解放されたが、狙ったところには当たらなかった。だが、奴の怒りは買った。
「テメェ、ヒーローじゃねえのか」
何処かで聞いたことがあるドスの効いた声。
彼はシェイドの事を知っている。シェイドもまた彼を知っている。
互いに知っていても掲げる正義が違えば、譬え同じヒーローでも敵である。
先に動いたのは彼だった。
一度の踏切でシェイドと一気に間合いを詰め、銃を構えさせる前に、容赦なく顔を殴りつける。
シェイドのゴーグルは割れ、破片を僅かに散らしながら影に落ちる。
「チッ!またか!」
彼の舌打ちがよく聞こえる。相手を油断させる策なのか、本当に焦っているのか、手当たり次第に爆破を始めた。
これだけ騒げば同じ屋内にいるヒーローは駆けつける。
「かっちゃん何やってんの!?ここ依頼主の家だよ!」
デクが顔を真っ青にして、階段を一度の跳躍で上ってきた。
それを見た “かっちゃん” はデクを睨みつけて、
「アホかテメェ!持ち場を離れんな!そっちに行っただろーが!」
「え!?」
驚いたデクは階段から落下して、全ての衝撃を片足に預けて走り出した。普通の人間がこれをやると骨折、良くても靭帯損傷……かもしれない。人間離れしたこの技術はデクの個性 “ワン・フォー・オール” が有るからこそできる荒技である。