第7章 灯台下暗し
シェイドはゴーグルを外し、右腕を摩る。耐熱繊維のスーツが少し溶けて、金属が覗いている。
『(熱くはなかったけど、ちょっと……)』
震える右手を強く握りしめた。
気を取り直してシェイドは自身の愛銃に弾を詰め直す。
ここは物置部屋。隠れるのには丁度いいが、半地下で出入り口は一箇所のみ。誰かが入ってきたら袋の鼠だ。
だからシェイドは用事を早々に済ませると、影に入って部屋を出る。
廊下に戻ると、明かりがついていた。廊下からは死角に入る柱に隠れる。
『(1人……デクさんじゃない)』
シェイドは相手の容姿を確認する為に、角を覗くときに使う鏡を出す。鏡が光を反射して自分の位置を知らせる事になるが、相手の場所や得物を知れる。
コーナーミラーの伸縮する棒はそのままに、鏡を柱の影からそっと出して相手を確認___、した瞬間に撃たれて割れた。
『っ!』
堪らず鏡を落としてしまう。
飛んできたのは白い拳くらいの大きさの厚さ1・2cm程の円盤、の様なもの。
それはシェイドの隠れる柱の1m程右の壁に刺さった。
『(厄介な……彼女の仕業ですね)』
廊下の先にいる電気の個性のヒーローをここに配置した、耳の良いヒーローが恨めしい。
シェイドは自身の得物を一瞥して、右手にだけ銃を持った。ハンマーは上りきり、あとは軽い引き金を引くだけ。
『(2階に2人。1階に2人、その内1人は目の前、もう1人は)』
___背後。
撃つが早いか、蹴るが早いか。
乾いた破裂音と鈍い音が重なって、
『があ!』
廊下に蹴り出されたシェイドの身体に電流が走る。
背中を床につけるコンマ数秒の内に見た景色は、左肩を右手で押さえて呻くデクと、こちらに人差し指を向けるチャージズマ。
『(アレが、電気の流れを…………そうか)』
シェイドは痺れる身体で寝返りを打ち、右手の銃をチャージズマに向かって___撃てなかった。
銃はそこには無かった。
「なあ、動けない人をいたぶる趣味は無いんだよ。降参してくれ」
チャージズマにそう話しかけられたが、シェイドは黙って膝を立て、両手をついて、ゆっくり起き上がる。