第2章 〇きみ日和(綾部喜八郎)
「会いたいなぁって思ったから、が僕の作ったトシちゃんに落ちてたらいいなぁって思ってた。だから探してた」
「私も。喜八郎に会いたいなぁって思って、喜八郎の作ったトシちゃんに落ちたの」
「おやまぁ。僕達相性ぴったりだね」
「だね~」
そんなことを言いながら、2人で空を見上げる。
綺麗にぽっかり空いた穴は、真っ暗な世界にできた天窓のよう。
まるで世界が小さくなって私達2人だけになったような、不思議な気持ちになる。
「お日様がぽかぽかして気持ち良いね、喜八郎」
「そうだねぇ」
「私喜八郎の作った落とし穴も、喜八郎も大好き」
「僕もがだぁいすき」
そう言われ、ぎゅっと手を握られる。
喜八郎の手はお日様より暖かくて優しくて、ずっとこうしていたい。
「僕ね、穴掘りが好きだからいっぱい穴を掘るんだけど、落ちたやつはいっつも僕に怒るんだ。でもは落ちたら喜んでくれる。誰かの為に掘ってるわけじゃあないけれど、に喜ばれると僕は嬉しいんだ」
いつもあまり表情を変えない喜八郎が嬉しそうに笑う。
それを見て私も嬉しくなる。
「あー、やっぱり私、喜八郎大大大好きだ」
「僕だってが大大大好きだよ」
「照れますなぁ」
「照れるねぇ」
何も無い休日。宿題、自主練、アルバイト、できることはいっぱいある。
それでも、たまにはこういう日も良いよね。なんて。
fin