第2章 〇きみ日和(綾部喜八郎)
とある休日の昼下がり。
私はぽっかりと空いた頭上の穴をただただぼーっと見つめていた。
柔らかな太陽の光がそこから差し込んで、とても心地が良い。
ここは穴の中。忍術学園に掘られた人2人くらい入れそうな大きな穴。
ひんやりとした土と太陽の暖かさが気持ちくて、ゆっくりと瞳を閉じる。
「おやまぁ。そんなところでどうしたんだい」
頭上から私を眠りの世界から引き戻す声が聞こえた。
視線をそちらに向けると、きょとんとした顔でこちらを見る見知った人。
「喜八郎だ~」
「喜八郎だよ~」
間抜けな声で彼の名を呼ぶと、彼もまた気の抜けた声で答えてくれる。
下から彼を見つめていると、その淡い灰色の髪の毛が日に透けて、キラキラと輝いて見えた。
「そんなところって、ここは喜八郎のトシちゃんの中だよ?」
「それは分かってるよ。でもトシちゃんがあるこの場所は忍たま長屋だよ?くのたまのはなんでここにいるんだい?」
「それはねぇ、喜八郎に会いにきたからなのさ」
「わぁーお」
いつも通りのぽかんとした顔で、さほど驚いてないだろうにオーバーな声を出す喜八郎。
そしてそのままぴょんっと穴の中へと落ちてきた。流石穴を作った本人というべきか、慣れたように私の隣へ降り立つ。
「僕もね、に会いたかったんだ」
そう呟きながら喜八郎は私の隣に腰掛けた。
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