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忍者のたまごな短編集

第3章 〇何処にも行かせない(善法寺伊作)


※伊作が病み気味



水無月の夜。雨の降る頃。
木々の影に隠れ、そっと様子を伺う。

「こちらは特に異常なし。伊作、そちらは?」

「こっちも怪しい人影はな…………うわわわああああ!?!?」

私への返答が終わる前に、真横でズルッという音と共に叫び声が響いた。
ハッとして木から身を乗り出し今にも落ちそうな彼の腕を掴む。

「伊作!?なにしてるの!?」

「ご、ごめん、……雨で足元が滑った……」

「もー、しっかりしてよね。いつもの不運とはいえ、今は大事な任務途中なんだから」


この密書を届けてほしい。
学園長先生から私達六年生に直々に依頼があったのは今朝のことだった。

集められたのは六年生の忍たま6名と、くのたま1名。
とある城へ密書を届ける。今まで請け負ってきた課題と殆ど変わらぬ内容。
しかし、明らかに今までと違うところがあった。密書を届ける3名の他に、足止め役の2名、監視役の2名がいるという点だ。

これには仲間の1人、クールな天才立花仙蔵でさえ首を傾げた。
密書を届けるだけでこんなに人数を要するのか、そんなに危険な任務なのか、と。
しかし任されたこの大事な依頼、降りるものなど誰もいなかった。
逆に潮江文次郎や食満留三郎に至ってはヤル気で漲っている。
そんな訳で私達は今夜密書を届ける為、その密書を狙う輩の足止めの為、そして監視の為忍術学園を出発した。

…………のだが。

「監視役の私達がこんなとこで怪我したら元も子もないでしょうに。特に伊作、保健委員の貴方が真っ先に怪我してどうする」

「面目無い………」

はぁ、とため息をつきながら伊作の脚にぎゅっと包帯を固定する。
雨で滑り捻挫した足は痛々しい色に変化していて見ていられなかった。
不運もここまでくると困りものだ。

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