第1章 情事に至るまでの5つの場面
――オレって、最低。
あんなん猟奇プレイを通り越して、拷問だろ。なんか泣いたっぽい跡も残ってたし傷見るだけでも相当ヤバいことやったのはよくわかる。
「なにやってんだ、オレ……」
「まったくだぁ。氷雨が不憫でならねぇぞ」
もう項垂れるしかなかった。本気で落ち込んでたら、スクアーロはもう殴ってこない。オレは別にMじゃないけど、出来れば殴ってほしかった。氷雨はもっと痛くて辛くて苦しかったに違いない。ほんとになんであんなことしたんだよ、オレ。
コツコツと足音が聞こえてきたかと思えば、入り口のドアを開いてルッスーリアが現れた。
「あら、ここにいたのね」
「う゛お゛い、氷雨の様子はどうだ?」
「治療が済んだら目を覚ましたわ。傷はちゃんと消えたわよ~」
「そうかぁ、そりゃあよかったな」
「ええ。そうそう、氷雨ちゃんがベルちゃんを呼んでるわ」
「……オレ?」
なんとかなったんだ。よかった。と思っていたら、自分に話を振られたのでオレは思わずルッスーリアに聞き返してしまった。氷雨が呼んでる、なんて。フツーあんなことした相手には会いたくないもんじゃねーの。正直どうすべきか、と思って戸惑っているとルッスーリアが「行ってあげなさい」と言った。でも、あんま行かせたそうな顔じゃないねオカマ。オレは床から立ち上がる。
「わかった。行く」
「まだ私の部屋にいるわ」
「ん、りょーかい」
「きっちり落とし前つけろよぉ、ベル」
「……はいはい」
二人の視線から逃げるようにオレはダイニングを後にした。落とし前ってなんだよ。別れてこいってことか。あいつは二言目にはそれだもんな。どーせ付き合ってたってロクなことにならないんだから、別れたほうがお互いのためには良いってか。勝手なことばっか言いやがってムカつく。
――ああ、確かにその通りだろーよ。
ここまで酷いことしたのは初めてだけど、あいつを傷つけたのはこれが初めてじゃない。フツーに喧嘩してて力一杯突き飛ばしたこともあるし、たまたまナイフが当たって怪我させたこともある。オレはフツーと違うから、力加減次第でひと一人壊しちまうことなんて虫を殺すみたいに容易い。つーか、氷雨じゃなくて一般人の女だったらとっくに壊して終わってるはずだ。オレが氷雨を壊さないでいられるのは、あいつがこっち側の人間だから。
