• テキストサイズ

アンハッピーエンド主義

第1章 情事に至るまでの5つの場面


ノックというには乱暴すぎるほど荒く扉を拳で叩いた後に部屋から顔を出したルッスーリアは、オレが抱えてる氷雨を見ると顔色を変えて部屋の中に招き入れる。理由は知らねーけど、そこにはスクアーロもいた。ああ、こいつには会いたくなかった。
「そこに寝かせてあげなさい!タオルの下、見ちゃうけどいいわね?」
「ああ」
そんなこと渋ってる場合じゃねーのはわかってる。正直ムカつくしカス鮫には見せたくねーけど、たぶん、誤魔化しきれない。オレの頭はまだ正常にまわっていなかった。傷だらけの氷雨の身体をもう一回見たくなくて、顔を背ける。バスタオルをとった瞬間に、二人が息を呑むのが空気でわかった。そりゃそーだよね。驚くだろ。オレも驚いてるよ。
「……なんとかしてやれ、ルッスーリア」
「ええ、わかってるわ」
「おいベル!てめぇは、俺についてこい」
オレも正直ここに居るのは辛かったから、大人しくスクアーロについて部屋を出る。ルッスーリアはオレが部屋を出る寸前に「大丈夫よ、ベル」と言った。マジで頼むよ、その一言がどうしても言えなかった。
無言で部屋を出たスクアーロは、人気のないダイニングまでやって来るといきなりオレを殴り付けてきた。最初から避ける気がなかったオレは、がっつり殴られて吹っ飛ぶ。ちくしょ、いてーよ。
「なにやってんだ、てめぇは!!」
「……わかんねーよ」
「はあ?ありゃどうみてもてめぇが付けた傷だろうがぁ!」
「わかってっけど覚えてねーんだよ!」
相手の声量につられてオレの声もでかくなる。マジで覚えてねーんだよ。状況から考えてオレしかありえねーのもわかるし、オレが昔やってたようなことやってんのもわかるが、記憶がない。それにオレはあんなこと氷雨にやってやろーと思ったことは一度もねーよ。床に座り込んだままの体勢で、握りしめた拳が震える。
「……たぶん、キレた。理由はわかんない」
「血ぃ見たのか?」
「そうじゃない、と思う…」
「気に入らねぇことでもあったか?」
「そーゆーのだと思う。たぶん」
頭に血が上るとワケわかんなくなるとこあるのは結構自覚してる。普通に喧嘩してるときでも余計なこと言ったりやったりするから、たぶんキレてたら相当容赦ないことやったり言ったりしてんだろーな。
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp