第1章 情事に至るまでの5つの場面
無防備になった上半身に冷たい手が伸びてきたかと思えば、思いっきり胸を掴まれた。揉むというよりも指先の爪を食い込ませるかのように掴まれて、痛みしか感じない。無意識に下唇を噛み締めると、さっき出来た傷にちょうど自分の歯が当たってまた血が滲み出す。
「……っ、……」
「ししし、さすがだねー。悲鳴なんてあげません、って?仕事熱心で尊敬しちゃうぜ」
「……、」
「そーゆーの見てるとさ、泣き叫ばせたくなるじゃんね?」
「!……いぁっ!?」
脇腹に噛みつかれた。刃物と違って鋭利でない歯が肉に食い込むときの痛みは半端なものではない。このまま噛み千切られるんじゃないかと思うほどの衝撃にビクッと身体が強張る。幸い、噛み千切られはしなかったが、じくじくと痛むそこにはきっと歯形がくっきりと刻まれていることだろう。さすがにじわりと目元に涙が滲む。
なんで、こんなことになったのか、皆目見当がつかない。
ぐいっと足を割り広げられて、濡れてもいない入り口に熱い塊を押しつけられる。サアッと顔から血の気が引いていく気がした。まさか、そんな。
「い、や……っやぁああああ!!」
これだけ大声で叫んだのは始めてだったかもしれない。痛い痛い痛い痛い痛い。もうそれしか考えられなかった。泣き叫ばせたくなると言ったくせに、視界の隅に映ったベルは、すごく泣きそうな顔をしていて全然楽しそうじゃない。ぎゅうっと胸が締め付けられるような感覚に陥る。次から次へと涙が溢れ出してくるから、視界が滲んでベルの顔もぐにゃりと歪んだ。
【怒りの余りムリヤリに】
next to………?