第11章 目覚めたばかりのイケメンドアップは心臓に悪い
「だからですね?旦那様、様は病み上がりなのです。その腕を離して、直ちに休ませたいのです」
晃くんは退けてくれますよね?と、無言の圧力(然し、とびきりスマイル)をかけ白蛇さんを移動させようとしている。
普段あまりしないような上目遣いでこちらを見つめてくるが、プイッと目をそらす。
「……わかったよ。退けるよ」
渋々、嫌々腕の力を抜き開放された。
ーーぐぅ〜
どうやら空気が読めない私の腹の虫が鳴いた。
かーっと顔に熱が溜まる。
「ふふっ、そうだろうと思いまして朝餉をお持ち致しましたよ」
天使のような眼福と愛でたくなる笑顔で、入ってきた障子の向こうへ晃くんは足を運ばせた。
カタカタと聴こえ、姿を再度見せた晃くんの手には1つのお膳。嗅覚に集中するといい香りが部屋に広がる。
「病み上がりなので、お腹に優しいものを……と思いまして」
「ありがとう。凄い美味しそうっ!全部食べていいのっ」
「あれ、私が食べたものとちがーー」
「ささっ、旦那様は大三神会のお仕事がありますでしょ」
白蛇さんの言うことを妨げ、晃くんはぐいっと引き部屋を出ようとしている。見た目は子供でも力は大人、ううんそれ以上だろう。
退室する寸前、白蛇さんは引く晃くんを止めこちらを振り返り見る。
「何か体に不調が出たらすぐ言うんだよ?」
心配に揺れる瞳をしている。
「……分かりました。今は節々が痛みますが、大丈夫ですよ?」
ほら!と見せるように、シュッシュとネコパンチにも満たないパンチを数度繰り出す。
それなら安心だと姿を消した白蛇さんの瞳は、
柔らかい色をしていた。