第11章 目覚めたばかりのイケメンドアップは心臓に悪い
優しい手つきで、よしよしと頭を撫でてくれた。
無意識に目は閉じる。視界は暗くなったけど、夢の中よりも温かいぬくもりを感じとても安心できた。
ーーちゅ、
唇に柔らかい何かが当たった。
何事だと、眉間にしわを寄せ開いた視界に映ったのは整った睫。薄っすらと開いている瞼から、蒼い瞳が見え
それがまた扇情的なものへと変えていく。再度降りかかる唇に、瞳を閉じかけていたとき。
「様っ!!お目覚めになられたのですね!」
スパーンッと音を立てて入ってきたのは晃くん。
ふるふると今にでも泣きそうな眼をしている。障子が開け放たれる寸前に、白蛇さんを剥がし距離を取った。
しかし既に腰に回っていた手は剥がせきれなかった。晃くんの視界には、肩を押し返す私と腰に手を回し、尚も離しはしない白蛇さんの静かな攻防戦が写っていることだろう。
「晃くん、ごめんねまた心配かけちゃって。まっててね今剥がすから」
ぐぎぎっ
それでも腕は剥がれません。どこかの童話の一部のような言葉が頭によぎった。
「晃、何で君は空気を読めないんだい。前はそんなことなかっただろうに……」
口を閉じていた艷やかな唇が開く。
「様は病み上がりでございますよ?ましてや神食化など、せめて一日は安静にしていただかないと。身の安全が第一です」
そう聞いた白蛇さんは口を閉ざした。腕は外す気はないらしい。
「……じゃあ、何もしないから側にいるよ」
人生最大の苦渋の決断のような表情で、ぼそっと細い声が聴こえる。ぎゅっと優しく、丁寧に再び体全体を包まれてしまった。