第11章 目覚めたばかりのイケメンドアップは心臓に悪い
暗闇が広がる空間にぽつんと佇む、
一人の私……
こちらへ一人、現し世にはもう私の存在もなく、
身一つでこちらへ来たからなのか、周りを見渡しても何が見えるわけでもなく、
ただ地面が。立てる場所があるというだけが今の状況。
どんなに目を凝らしても、その先は真っ暗。
何も見えはしない。この先どうなるのだろうと言う私の不安を表しているかのようだった。
「…………」
見えない先へ一歩踏み出そうとしたときだった。
後ろから聞き覚えのある、声が広い空間に木霊するように広がる。
(……っ、この声は?)
目を開けなくては、開けないとと分かっているのに、
瞼が鉛のように重く、言うことを聞かない。意識も戻りかけているが、薄ぼんやりとした思考が考えることを遮る。
(お願い、開いて……)
願いは叶ったのか、えいっと力を入れると、
バッと広がる視界。映るのは暗闇ばかりだったためとても目に染みる。息も荒い。
視界の端に映ったのは、目を丸める白銀の髪を持つ男性。白蛇さんが布団の端にいた。
「……はくだ、さん?私……」
あれ?私なんで寝てるんだっけ?寝込んでいた状況も忘れ、浮かぶのは疑問符ばかり。
「あぁ、良かった……8日も意識が戻る様子が無かったから心配で」
8日。なんでそんなに意識がなかったのだろう。と思い浮かんだところで、寝込む前の記憶にピタリと繋がった。
そうだ、私は白蛇さんの霊力を取り込んで、神食化で寝込んだのだと記憶の隅から見つける。
早くて7日だったよね……?
それなら早い方なのでは。でも一週間と1日、意識戻らなかったらさすがに焦るよね。
何だか居た堪れなくなり、「心配かけて、ごめんなさい」と視線を合わせ謝りの言葉を言う。白蛇さんはふにゃりと柔らかい笑みを見せ、
「良いんだ、それに私も辛いことをさせたね」