第10章 【お風呂場での濡れ事】
「……っはあ、はぁ……」
中でドクドクと脈打つ音がする。
また出されているのだろうか……。そう言えばこの前も出されたっけと、薄霧にかかった頭の中で考える。
出される感覚が収まり、ずるりと抜かれる感触でさえ快楽に捉えてしまう。
息が大分整って、ぱちっと目が合う蒼い瞳。今まで目があったことはあっても、数秒も見つめたことなかったな。綺麗な透き通る蒼、私はこんな素敵な瞳を持っている人に好かれたのかと、
どこか嬉しいような、私でいいのかという不安が半々に混ざり合う。
「……あの、本当に私なんかでいいんですか?」
まだ果てたばかりの夢心地な気持ちで、思わず口に出してしまう。きっと、ムードが壊れる、興ざめな一言だろうと、
言ってしまった後悔に苛まれる。しかし、答えはすぐ返ってきた。
「そういえば、簪を買ったときから表情が曇っていたけれど、どうしたんだい?心配で仕方なかったのだけれど……」
"かんざし"と聞いて、ビクッと分かりやすい反応をしてしまう私の体は正直なのだろうか。
「っそれは……、店主の榊さんが、常連のように接していたから。沢山買っていて……その、私じゃない違う女性に贈り物として渡していたのかなーと考えると、胸が痛くなってきて……」
「なんだ、そんなことか」と、心底安心したような息を吐く。
「君の言うとおり、確かに常連だけど、贈る相手はしかいない。私はずっと、君に合う髪飾りを買っていたんだよ。勿論贈る相手もだけ。と言ってもその時は、まだ君は現し世に居たけどね」
一体どれだけ髪飾りに費やしたのだろうか。あの高級店のような風格のあるお店の常連客になるには、きっと相当な額だろう。ごくりも息を呑みこんだ。