第5章 不安と混乱。
私は顔を上げた。
白蛇さんは苦悶の表情を浮かべている。
「…………少しの間考えさせてください」
今言える、精一杯の言葉だった。
白蛇さんの部屋から出る。失礼しましたと言える余裕なんて無かった。出ると、すぐ近くに晃くんが待っていてくれた。
「様っ……」
聞こえていたのだろうか、とても悲痛な表情をしていた。きっと、私の目は泣いて沢山拭ったせいで、泣いたと丸分かりだろう。
部屋から晃くんに話しかける白蛇さんの声が聞こえた。
「晃、を寝室へ案内してくれないかい?」
はいと言っていたが、晃くんは何か言いたそうにしていた。
朝居た部屋へ帰っているときだ。
「私の存在は、もう元の世界には居ないの?」
「……はい、そうです。様は只今どちらの世界の者ではありません……」
そのあとは終始無言だった。
部屋へ着く。ここまで案内してくれた晃くんにお礼をして部屋へ入る。
今朝、布団が捲れ上がっていたのに綺麗に折りたたまれシワ1つない布団が敷かれていた。
晃くんだろうか。でもその間は晃くんが厨房に案内してくれていたし、白蛇さん?でも、出来なさそう。
若干、貶してしまったことは許してほしい。
「そうか……、あっちに行っても私を覚えている人何ていないんだ」
1人悩みに悩んで、いつしか眠りについていた。