第5章 不安と混乱。
「私と婚姻すれば……ね」
「えっーー」
思わず狼狽える。白蛇さんはニッコリとした笑顔、何も無いのなら唯の美青年の笑顔に過ぎない。しかし、何か多少の闇をその笑みに感じた。
「は今のままじゃ、人間のままでは戻れないことは本当だよ」
「じゃあ、何で婚姻なんてする必要が」
「が、現し世へ戻れると言えば語弊があるかもしれない、偶に現し世へ行くって言ったほうがいいかな?こちらの住人になるにはこちらの住人と婚姻するのが1番手っ取り早いんだよ」
こっちの住人?それは一体何になるのだろうか……。
それに、偶に現し世に行くってーー
「まるで、私の存在が無くなっているみたいに聞こえるんだけど」
私が家族、友達、近所の人からも存在自体忘れ去られると言うか。
色々想像すると、込み上げてくる物があり、次第に目には涙が浮かぶ。
我慢しようとしたけど、その気持ちとは裏腹に涙は零れていった。
「なんで……言ってくれなかったんですかっ。そうなるなら、こんな所に来たくなかったっーー」
泣いて中々口が思うように動いてくれない。
「すまない、このまま君の将来を見届けようとしたんだ。けれど君の横に違う男が居ると思うと衝動が抑えられなくて……」
白蛇さんの声は最後には消え入りそうなほど、か細いものだった。