第6章 第零話
「…どういうことだ?」
俺は女を見ながら腕を組む。
どんな奴でも、魔力があろうがなかろうが、人間の周りにはルフが常に飛んでいる。
なのに、こいつの周りには一羽も飛んでいない。
俺の周りの黒ルフ達もこいつには近寄ろうとすらしない。
なんだこいつは?
一体何者なんだ?
てか、なんかうなされてねぇか?
しばらくすりゃ起きるか…
そう思った俺は、取り敢えず一緒に連れていこうと決め、女を絨毯に乗せ、再び浮上した。
で、今に至るんだが…
こいつ、全くもってなんの知識もない。魔力とかルフとかは魔法使いじゃないと縁がないだろうし別にいいんだが、
旅人なのに地理が全然駄目。
これは流石にどうかと思う。おかしすぎるだろ。
小、中くらいの国とかならまだしも、煌帝国やバルバッド、シンドリアとかの強大な国すら知らないようで、俺が話す語句全てに頭にクエスチョンマークを浮かべるもんだから、結局、片っ端から全部話してやらないとならなくなる始末……
こいつ、ホントのホントに、旅人か?
まぁ、事情とやらもあるだろーし今はいいけど、いつかは聞いてみっか、と思った。
と、同時に、思ったことが一つ。
何してんだろ、俺?
普通に考えてみて、いつもならこんな女、さっさとテキトーなとこに降ろしてちゃっちゃと帰って寝るってのに。
珍しく好奇心が出る。
ちょっとでもこいつの事が知りたい。
そう思った。