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生贄のプリンセス【Fischer's】

第2章 出会い


「着いた着いた」
彼はそう言って、大きい門の目の前に止まる。
薔薇の模様が入っている門の隙間から見えるのは、これまた大きなお城。
おとぎ話にも出てくるんじゃないかと思いながら、パチパチと目をまん丸にする私。

ここがどういう場所かは分からないけど、誰でも入れる場所でない事くらい分かる。

「シルクでござる~!開けてくれ!今日は姫も一緒ですぞ~」
どうやら彼は、センサー付きのカメラに喋っているようだった。
ギィと音を立てて、お城の門が開く。


「ほら、来い!」
彼は、私の手を自然にとり 連れて行ってくれた。

真っ直ぐとお城に繋がる道の両脇には、ラベンダーやバラが植えられている。
ずっと嗅いでるとクドい。けど、こんな大量のお花、誰が管理するんだろう。

「あの、ここのお花って、誰が管理してるんですか……?」
思った事を素直に聞くと、彼からは

「大体はメイドだな。あとは、俺達とか」
と、返答が来る。

「……俺〝達〟?」

その疑問と共に ぴたりと止まる、私。
彼は段差を乗り越えて、お城の扉に手をかけた。

「あれ、言ってなかったっけか。
俺、こいつらと一緒に住んでんだ」
その言葉は、扉を開ける前に聞こえた。
まだ理解すら追いつかない言葉だというのに、ガチャっと扉を引き開ける彼。


そこには、体型がぽっちゃりな人。
ノーマルでふわふわした雰囲気の人。
私よりも細い人。

と、個性豊かな人達が並んで立っていた。


さっきの彼の言葉〝俺達〟に含まれるのが、この三人だという事はすぐに理解できる。
けど……と続いていく疑問を呑み込んで、私は前を向く。
すると、ふわふわした雰囲気の人と、目が合ってしまった。

なんで、目なんか合うの……。

結局目を逸らしたけど、彼はニコニコしたまま。
不思議な人というのが、彼の第一印象だった。


「左から紹介すると、ンダホ、モトキ、ぺけたん、で……
俺は、シルク」

私をここへ連れて来た彼……いや、シルクさんは、順に紹介していく。
不思議なモトキさんが妙に気になったけど、

「そんなに大勢覚えられないよね。
とりあえず、俺はンダホだから!」
そう言いながら近づいてくる、ぽっちゃり体型のンダホさんに気を完全に取られた。


「よろしく、お願いします……」


これが、言うなれば〝問題児さん達〟との出会いだったんだ。
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