第6章 嘘
モトキside____
「──あれ?」
時刻は午後。
夕飯の支度を手伝いに、と、三人で階段を降りていたら、ンダホが突然何かを見つけたようにどこかを指差した。
光り輝いた明かり達の中、ただ一人。
「恋奈……?」
風船がしぼんでいるかのように憔悴しきり、地面にへたり込んだ彼女が居た。
「どうしたの?!」
走り出したンダホに、俺らも続いて恋奈に駆け寄る。
明らかに震えていた彼女に自分の上着をかけてあげた。
「ぅ、う……っ」
嗚咽に邪魔されたのか言葉にならない彼女の声が俺らの耳に痛く響く。
こんな時にシルクがいないなんて。
それは必然なのだと分かった。
「大丈夫?何があったの?」
なるべく温かみのある声で聞いた。
俺は彼女の頬に伝う涙を手で拭う。誰かの手は、自分の手でぐしゃぐしゃに拭うよりもずっと安心だから。
「俺らは何にも言わないから、話してみてよ」
続いてぺけがそう言う。
何秒か沈黙を置いて、彼女の涙が流れる速度と同じ速さで彼女は話し出した。
何ていうか、沢山の色を混ぜ合わせたら、全く知らない色ができてしまった。話を聞いて一番に感じたのは、そんな事だった。要は複雑。
でも、俺は恋敵の仲をも取り持って、良い顔を見せる殻に篭るしかなかった。
そうでもしないと恋奈が振り向いてくれない気がしたから。
「ねぇ、それ、おかしくない?」
そんな自分も十分卑怯だと思った。
「おかしいって、何が?」
予想した通りにンダホが食いついてくる。
恋奈もまだ涙を目に溜めたまま、こちらに視線を向けた。
「こんなに震えた恋奈を、シルクがタオルさえあげずに放っておくと思う?」
シルクは恋奈がここに来てくれた事を一番喜んでいた。
だから一度傷つけてしまった恋奈の心はもう完全に直らない事なんて、分かってるに決まってる。
そんなシルクがこんな二の舞を起こすはずがない。
「確かに……一番は心配するはずだし、〝嫌いなら嫌いって言って〟ってシルクが言うのも、何かおかしいよね。」
「そういえば今日、シルクの家にソア?って子が訪ねてたの知ってる?」
ひとつピースが当てはまれば、もう一つを見つけるのは簡単。
俺達は顔を見合わせて、頷いた。