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生贄のプリンセス【Fischer's】

第6章 嘘


シルクside____

「ん?ソアが訪問しにきた?」

電話越しでも分かる、声色が急に変わった王様。
俺はそれにびっくりして、続きの言葉を出せなかった。

毎月、この城に訪問者が来たかどうかを報告する 訪問者報告の電話。
ここ最近は全く居なかったが、どうやら今日 イズカというメイドの姉、ソアが来たようで。

そして、そいつが王様にとっても気になる存在なようで。

確かソアって奴はこのお城に来た姫──恋奈を一度でもいいからお目にかかりたいと言って、帰ってきたんだとか。
まぁ確かに、何年も姫がいなかったこの王国に来た姫を見たいのは分かるが───

「おい、聞いているのか?」

受話器から、突然渋い声が聞こえてきた。
あ、俺、王様と電話してたんだった。

「あ、すみません。ところで、そのソアって奴がどうかしたんですか?」

俺は単刀直入に聞いた。
何かを後で知るよりかは、今先に知っておいた方が安心だ。

王様は少し考え込んでから、声を唸らせ

「いや、いいんだ。何もないなら。」

そう言う。
何もないなら、という事は、過去に何があったという事なのだろうか?

何にしろ、今ここで聞いたとしても 今の所何も被害はないわけで。
俺は、聞いてしまいそうな口を必死に抑えて早々に電話を切るしかなかった。


すると、扉がガチャと開く。
ノックぐらいしろよ、と思う時は、大抵──

「訪問者報告どうだったー?」

ンダホなんだよな…。

「何にもない」

「……なんか怒ってない?!」

ンダホのことを尻目に、俺は扉をバタンと閉めた。一生お菓子でも食ってろ。


二階の廊下をドタドタと歩いていると、下から如何にも女子という声が聞こえてくる。
思わず一階のリビングを上から覗くと、三人で談笑しながら遅めの朝食をとっていた。

イズカに、恋奈……あれがソアって奴か。

「案外普通の奴……」
思ったよりも普通なもんだから、不意に口から本音がこぼれた。

俺がリビングをぼーっと見ていると、突然横からモトキがにゅっと出てくる。

「でも、気を付けた方がいいよ。」

しかも、そんなことを言いながら。
俺はいつからいたんだ、と言う言葉を飲み込んで、溜息をつく。

「こういう時のモトキの勘は当たるんだよな…」

そう落胆する俺の姿を見て、モトキは笑っていた。
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