第13章 The strategy of conflict
「此処からは 大人の時間だね。」
太宰の言葉に、紅葉はごくりと息を飲む。
太宰は椅子に腰掛けてから、口を開いた。
「姐さん。大人の取引をしよう。鏡花ちゃんを助ける計画がある。」
「何?」
「一度彼女を逮捕させ、異能特務課と司法取引する。」
「逮捕じゃと!?」
「成功すれば探偵社にも入れる。彼女の命と夢を同時に守る唯一の方法だ。」
「不可能じゃ。闇に生まれた者は闇にしか生きられぬ」
「それは鏡花ちゃんではなく貴女の話でしょう姐さん。姐さんが鏡花ちゃんと同じ年の時、慕っていた年上の男性とともに組織から抜けようとした。けど首領に露見し男は殺された。それ以来貴女はマフィアを恨んでいる。」
「………」
「先代の頃の話だ。今とは状況が違う。何より、私となまえが居る。鏡花ちゃんは同じにはならない。」
紅葉は、ゆっくりと顔を上げた。
「……外の輝く世界を見せてあげようとあの人は云った。」
「見せてあげればいい。貴女が鏡花ちゃんに。」
「………なまえは、」
「……うん」
「なまえは今、幸せかえ?」
紅葉の言葉に、太宰は困ったように笑う。
「そればっかりは、なまえにしかわからないことだけれど、」
言ってから太宰は、椅子の背もたれに頬杖をつきながら続けた。
「楽しそうに、何時も笑っていますよ。だから私は、彼女を組織から連れ出した事を、後悔なんてしていない。」
太宰の言葉に、紅葉はふっと笑った。
「そうかえ……。わかった。協力しよう。」
「そう云ってくれると思ったよ。」
「その前に一つ…わっちの頼みを聞いてはくれぬか…太宰。」
―――「一目でいい。なまえに、会わせてはくれぬか。」