第13章 The strategy of conflict
「やあ 姐さん。ご無沙汰。」
紅葉が目を覚ませば、其処は探偵社のベッドの上だった。脇には、太宰が腰掛け、後ろでは敦が見張っている。
「……この程度の縛めでわっちを紮られると思うたか」
「真逆。だから私が見張りに。」
「確かに久しいのう。裏切り者よ。組織の誰もが其方の首を狙っておるぞ。裏切っただけに済まず、わっちらの大切ななまえまで拐ったのじゃからのう。」
「はは、行列に並ぶよう云わないと」
「なまえは何処かえ?」
「彼女は席を外していますよ」
「……そうか……」
そういった紅葉は、とても寂しげだった。
そして、後ろにいる敦に声を掛ける。
「童。鏡花は無事かえ。」
「彼女は…行方知らずだ。貴女の所為だ!!」
敦は声を荒げ、紅葉を睨みつけた。
「くく……くくく くくく……」
「何が可笑しい!!」
殴りかかろうとする敦を、太宰が止める。
「彼女は私に任せ給え。君は外に。」
「太宰さん!!」
「善いから」
太宰は半ば強引に、敦を部屋から締め出した。
「却説、早速で悪いけれど開戦までもう間がない。そして捕虜には大事な仕事釜在るよね?マフィアの戦況、今後の作戦を教えてもらおうかな。」
「ハッ。マフィアの掟を忘れたかぇ坊主。江戸雀は最初に死ぬ。」
「姐さんの部下に拷問専門の班が在ったよね。でも偶にその班でも口を割らせられない鉄腸漢が現れる事もあった。そんな時は私が助太刀したよね。」
「………、」
「私が訊いても口を閉ざした儘の捕虜が 一人でも居たっけ?」
太宰は冷たくそう言ってから、がちゃり、と鍵を閉めた。紅葉の背筋は、ぶるりと震える。
「此処からは 大人の時間だね。」