第1章 君の相手は俺しかいない
晴れて成人した承太郎は、今では堂々と酒を口にすることができる。もっとも、未成年の頃から全く悪びれることなく飲んでいたのだが。
上等な酒をグラスに注いで、ゆっくりとその香りを楽しむ。
くい、と飲み干した時、少し前方にあるカウチからむくりと起き上がった人影があった。
完全に一人だと思っていたが、何と先客がいたのだ。所々に装飾のために置かれた観葉植物が影になって、全く気がつかなかった。
承太郎は小さく舌打ちをした。
せっかく一人きりになれたと思ったのに、また誰かの相手をしなければならないのかと思ったら、どっと疲れが出てきたのだ。
(一体誰だ…)
やや不機嫌になった承太郎は、発見ついでに誰がいたのかを確認しようと目を凝らしてみる。
だが、月明かりの中に立ち上がったその姿を見て、承太郎は思わず息を飲んだ。
立ち上がったのは、女性だった。