第1章 君の相手は俺しかいない
承太郎は女性の甲高い声が苦手だ。どうしてもあの声が癇に障る。
だが、目の前にいる女性は、絶対にそんな声は上げないように見えた。いや、むしろ彼女のものならどんな声でも聞いてみたいとすら思った。
「空条承太郎だ」
その名を聞いた瞬間、彼女はその白い手をポンと小さく打った。
フワリと花のような香りが承太郎の鼻をくすぐる。
「存じております。ジョースターさんのお孫さんですね」
「あぁ。ところで、先程あんたの演奏を聴かせてもらった。…素晴らしかった」
言葉少なだが承太郎の真摯な感想に、彼女は花のような笑顔を浮かべた。
「光栄です。私はこの通りの盲目で、他にできることもありませんが、少しでも皆様に楽しんで頂けたのなら嬉しいです」
そうしてにっこりと微笑んだ彼女を見た瞬間に、承太郎は確信したのだ。
俺の結婚相手はこの女性以外にはありえない、と。
~Fin~