第1章 君の相手は俺しかいない
「承太郎、ここにおったのか!」
黒のタキシードを着たジョセフが、太陽のような笑顔を浮かべて声をかけてきた。
承太郎の祖父であるこのジョセフ・ジョースターは、70代という高齢であるにも関わらず非常に頑強な肉体を持ち、いつまでも青年のような雰囲気を失わない。
「おいジジイ、今のは…誰だ?」
「ん?今の演奏者のことか?」
承太郎の唐突な問いに、ジョセフはキョトンと目を丸くする。その瞳は、承太郎のものとそっくり同じだ。
「なんだ、お前知らんのか?彼女は世界的に有名なバイオリニストの、・だ。スージーQの奴が、彼女の大ファンなんじゃ」
「…」
承太郎は先程の彼女の姿を思い浮かべる。可憐な彼女のイメージにぴったりの名前だと思った。
「気になるのか?ん?」
ニヤニヤとしながら肩を組んできたジョセフをジロリと睨んで、承太郎は再度、先程まで彼女の立っていたステージを見つめた。
すでに次の演奏者が演奏を始めていたが、そのことに承太郎は全く気がつかなかった。