第5章 子ども化
「………」
リヴァイは本気で悩んだ。
今、この薄い布団一枚はげば、自分の欲しかったもの全てが手に入る。
のしなやかな肢体を想像して、リヴァイは布団を握った手に一瞬力を込めた。
「……っ」
だが、どうしてもそれ以上手を動かす事ができない。
静かな寝息を立てるの、穏やかな寝顔を見つめる。リヴァイの中では、大切な後輩というくくりをとうの昔に超えていた。
リヴァイは一人の男として、を女として好いている。だが、恋愛は目を曇らせる。だから、この想いを打ち明けるのは、巨人を絶滅させてからだと自分自身に誓っていた。
リヴァイとは、気持ちを伝え合ったこともないのに、お互いの気持ちを何となく察していた。普段の振る舞い接し方から、何となくわかるというものだろう。だが、それでも、二人は気持ちを打ち明けることなく、職務に誠実であろうと自分達を律していた。
(今こいつを奪ったりすれば、こいつの想いを踏みにじることになる)
リヴァイはそっとベッドから抜け出すと、の肩に布団をかけてやった。
窓の外を見ると、すでに白々と日が昇り始めていた。
ぞろぞろと皆が食堂に集まってきた。
「あれ、兵長早いですね」
すでにテーブルについて紅茶を飲んでいるリヴァイに、オルオが声をかけた。
「あぁ…」
カチャンと、ティーカップを置いた時、が食堂に入ってきた。その姿に皆が驚く。
「あ、元に戻ったんですね!!」
エレンが笑顔で駆け寄った。
「あ、うん。今朝起きたらね…戻ってた」
少し困ったような表情で、がニコッ笑った。
今、は兵服を着ている。ハンジが置いていってくれたのだ。