第5章 子ども化
「オルオ~、エレン~」
ひょこっと、建物の陰から姿を現したに、オルオとエレンの二人の顔もほころぶ。
「どうしたんですか、班長」
「いや、何か私に手伝える事ないかなって…」
「手伝いですか~、そうですね~」
オルオが腕組みをして思案しようとした時、建物の影から顔を出したリヴァイとバチッと目が合った。
(怪我させんじゃねぇぞ…)
ギラギラと光る目がそう言っている。その視線を受けて、オルオとエレンも青ざめた。
(や、ヤバイですよ、オルオさん!兵長マジですよ!!)
(わ、わわわ、分かってる!!)
ガタガタと狼狽し始めた二人に気付く事もなく、は井戸の綱に手をかけた。
「まずは水汲まないとね」
カラカラと綱を回し始めた瞬間、
「きゃああああ!!班長っ危ないですっっ!!井戸に落ちたらどーするんですか!!」
エレンがまるで乙女のような悲鳴を上げて、慌てての小さな身体を抱き上げた。
(わ、軽っ!!柔らかっ!!)
「わぁっ!エレン、大丈夫だって!!」
急に身体を持ち上げられ、も驚く。が、すぐに、
「高ーい!」
途端には鈴の音のような笑い声をキャッキャと上げ始めた。
のもともとの身長よりも、今エレンに抱きあげられている方が目線が高く、それが非常に新鮮に感じられたのだ。
きゃあきゃあと喜ぶの姿に、エレンもデレデレに顔を緩ませている。
「え、そ、そうですか?では、僭越ながら…高い高ーい!」
天使のような笑顔を浮かべて喜ぶは、今はどこからどう見ても子どもにしか見えなかった。
(班長可愛いなぁ…)
エレンはささくれ立った心が癒されていくような心地に浸っていたが、オルオに肘でちょいちょいとつつかれて、はっと、木陰に佇むリヴァイに目をやった。
無感情な瞳がじっと向けられている。しかし、その背後にはどす黒いオーラが浮かんでいた。
「(はぁっ…殺されるっ!!!)班長っ、馬の世話はもう終わっていますので、ぺトラさんのお手伝いなど行かれてはいかがですか??!」
またもや、エレンとオルオの強引な勧めで、はその場を後にしたのだった。